田舎暮らしは究極の贅沢 自然との共生は無限の可能性〈百姓・木村- 木村節郎さん(後編)〉【人物百景@たぶせ】

人物百景@たぶせ

人物百景@たぶせ、第4話は、

田布施町でジャンボタニシの生態を利用した有機農法や、異なる種類の稲で田んぼを描く”田んぼアート”を主宰する、『百姓・木村』木村 節郎さんにお話を伺ってきました。

名前:木村 節郎 (きむら せつお)

プロフィール:田布施町上田布施のご出身。家業の農業を営みながら、田布施町の地域おこし、教育、文化などの多方面にご活躍。

稲作においては、一般的に害虫とされる”ジャンボタニシ”を利用した有機栽培のお米『ジャンボタニシ共生米』が高い評価や取材を受ける人気商品として販売されながら、

元芸大出身の経験を生かした地域おこしのイベントとして毎年、『田んぼアート』を営農地で実施し、それを地元小学生にも体験してもらう『田植え体験』を主宰している。

(聞き手・撮影・記事=田原)

※写真は一部木村さんからご提供をいただいておりますので、無断での転用はお控えください。使用をご希望の方はご連絡をくださいませ。

こちらは後編です。前編はこちら↓↓↓

田舎暮らしは究極の贅沢 百姓・木村- 木村節郎さん(前編)【人物百景@たぶせ】 | 田布施の耳たぶ (tab-mimi.com)

自然な暮らしの生みの苦しみ

田舎、田布施に帰ってからは”他人任せにしない生活”の一環として、有機栽培での農業に積極的に取り組んだきむらさん
人間のルールに従うのではなく、自然の声を聞く。

木村さんが有機農法としてまず取り組んだのが合鴨農法でした。

田植えを終え、稲が活着したら、そこに合鴨のヒナを放つ。そうすると、合鴨が水をかき回す事で、草を発芽させにくくしたり、浮かせたり、食べたり、ついばんでくれて、除草剤や殺虫剤が必要なくなる。

自然の循環の仕組を利用した理想的な有機農法ではあるものの、鴨の世話に大変な労力がかかる農法。

鴨という生き物もまさに自然の一部であり、稲にとっての害を取り払ってくれる面もあれば、

鴨自体の生業、動物であり、自由意志がある。

飼育していく労力に加え、生き物として、仲間として最期を見届けねばならない苦しさ。


合鴨農法で活躍する場が増えるにつれ、地元で認知され信用が積み重なる反面、“稲作“に関わる労務はどんどんと増えてゆき、極限の状態に。

そんな中、木村さんの元に現れたのが…
ジャンボタニシでした。

お多助貝大明神様

スクミリンゴガイ、通称ジャンボタニシは、一般的に田んぼの害虫

しかし、木村さんのようにジャンボタニシを利用した有機栽培を行う人にとっては重宝される生物です。

ジャンボタニシは、水のあるところで若草をエサとして生きるこの習性こそが、農薬栽培と有機栽培で害の有無の見解が真反対になるポイント。

慣行農法による田植えの手順では、機械化が進んだことで稚苗(ちびょう)という、かなり若くて小さな苗を植えます。田植え機が使え、効率化に繋がるから。そして、田植え終わりには苗が沈まない程度に全面にめいっぱい水を張り、そこに除草剤を投入。その時点で水から顔を出さない草は生えることがなくなります。更に、そこに殺虫剤やジャンボタニシを駆除する薬剤を投入する…といった手順を取ります。

木村さんの有機農法では、特別なポット式の田植え機により、ジャンボタニシが好まない茎の固くなった成苗(せいびょう)を植え、その後田の水は限界まで抜き、ジャンボタニシの活動を抑制します。そして、雑草が生えてきたら水を張り直す。そうすると、ジャンボタニシは若い雑草のみを好んで食べる…要は勝手に草取りをしてくれる。

木村さんはこのジャンボタニシを
ジャンボタニシ大明神
と呼んでいます。

稲はただ育とうとしているだけ

日本がコロナ禍による混乱の坩堝の中、西日本では数十年ぶりのウンカによる米の大凶作が起こった2020年。

一帯が大打撃を受けた中、田布施で木村さんの仲間内、有機栽培での稲作を営む農家さんは、ほぼウンカの被害を受けない強靭な稲作に成功。

それどころか、今までにない熟れ色を見せたそう。

田原:率直に、なんで木村さんの有機栽培で育った稲はウンカによる被害を受けなかったんでしょうか。

木村さん:そこに生態系があったか無かったかって事でしょうね。うちの田には少々ウンカが来ても、それを捕食するカエルやクモがおるからね。それを、人間にとって都合のええものだけ残そうとするからいるものまで無くなってしまう。

自然の取り決めと、人間の取り決めは決して一致せんのんよ。稲はただ育とうとしているだけ。

人間が勝手に雑草とか害虫を悪者と決めつけて、自分らが勝手に使っちょる農地に農薬やら撒いてしまうけえ、害虫を捕食してくれるカエルやクモもみーんなおらんくなるんよ。農業によって本当に自然の恵みを享受しよういうんなら、その自然のルールに従うことを考えるだけじゃろうと思うんですよね。

木村さんは農薬や化学肥料も必要だと思えば使えばいいし、やり方は千差万別、有機栽培以外の方法を否定はされないものの、

ただ大きく育ちたい稲と、与えられた環境で繁栄したいジャンボタニシ、その他にも人間にとっては害虫でも、その生物たちにとっては生きてゆくというそれだけであって、

人間の都合で作られた薬品や肥料によって人間の都合で農業をするよりは、自然のルールに合わせた農業をするのがまさに自然じゃないかというお考え。

自然の中にある人間は、自然のルールの中で動物らしく生きることを目指していきたいと、私自身も感じました。

働いて、周りの人が喜ぶ顔を見て嬉しくてたまらなくなったら一人前

木村さん:近頃は運動不足じゃいうて、みんなウォーキングとかしよるけど、それならみんなで草刈りしたらええのになぁと思うんよね。草刈りはええよ。僕はね、『草刈りは天下の楽しみ』ちゅうて妻といっつも楽しくやりよるよ。

百姓・木村流、草刈りは天下の楽しみとは、

  1. キレイになる
  2. やった分がすぐわかる
  3. 周りの人が喜ぶ
  4. 刈ったところが使いやすくなる
  5. 運動になる

の五項目だそうです。

※木村さんが管理する田のうち、小学生の実習で田んぼアートとして使われている田。

木村さん:働くこととは、お金を稼いで暮らすことじゃなくて、

働く『はたらく→傍(はた)を楽(らく)にする』いうことよ。働いて、周りの人が喜ぶ顔を見て嬉しくてたまらなくなったら一人前ですよ。

確かに、人の役に立つことに前のめりになって、快感になることが、本来人間の最も純粋な喜びなのかもしれませんね。

人に伝えることの大切さ

昨年、コロナ禍においてもこんなに立派な田んぼアートを実現された木村さん。

木村さんはお手製のメッセージカードなど、『人に伝えること』もとても大切にしてらっしゃいました。

芸大生として腕を磨いた大学時代、作品を見てもらうためにまず必要だったキャッチフレーズやインパクト。そして伝えたい相手を理解する気持ち。

木村さん:微生物の世界でも、いわゆる『善玉菌』と『悪玉菌』って、人間に害があるかないかで分けられとるんじゃけど、実はほとんどの菌が『日和見菌』ちゅうどっちにもなれる菌で、善玉菌と悪玉菌の、先に優位に立った方に8割がなびいて作用するんよ。

なんぼええ事をしても、中立の人に理解してもらえんかったら世の中は動かんのんよね。

自分がどれだけ立派なことをして、評価を得たとしても、『〜すべき』とか『〜が正しい』とか人を縛るような言葉では相手は動かんし、僕はいつも『あなたはどう思う?』と、人の話を受け入れられる人でありたいと思っちょるんですよ。

自然とともに生きると日常生活の様々な出来事も全てが恵みであって、自分から狙ったり求めたりしてやることは何一つないことが分かるそう。

人間は自然の一部であるという考えからすると、先述の西日本のウンカによる米の不作も、全世界を驚愕させるコロナウィルスの影響も、
全ては自然の摂理の一部。

この度のコロナショックは
『人間はこのままではいけないという自然界からの警告』
人間の生活が自然の摂理から外れていることへの警鐘では無いかとの想いが胸に響きました。

自然の一部としての“自分“が、田舎から伝えたいこと

※木村さんの過去の田んぼアートの様子や記念写真。

数十年規模の不作に見舞われた昨年の西日本の稲作。
しかし、木村さんをはじめとして田布施でこの有機栽培に取り組む農家さんは、その被害をほとんど受けることはありませんでした。

人間の範疇で無理矢理管理すれば、想定を超える状況になった時にコントロールできないのは当たり前で、日頃から自然から与えられる恩恵をそのままに享受していれば何の心配もないんだ。

稲作の歴史は3000年にも渡るもので、化石燃料によって生み出された、60年程度の今の社会は、
『人間が自然を制したと錯覚する狂気の時代』農薬や化学肥料により、本来は味方である微生物も死に絶え、害虫を食べてくれるカエルやクモもみんないなくなったひ弱な田んぼは、まさに病気そのもの。

人間の想定では修まらない。他人まかせの時代は終わり。動物と同じ生活ができるようにならないとこれからは自然に対応できない。

西日本ウンカ被害やコロナの蔓延も自然の合図で、自然に則した暮らしや、あるものを大切に分け合っていきなさいという、最後の警鐘であり、自然の合図。


『人間が自然に生かされ、暮らさせてもらっている事を忘れてはならない』

※木村さんが初めてチャレンジした、国民文化祭の開催された2006年の田んぼアート…レベル高い。

木村さん:贅を尽くした貴族が最後に行き着く贅沢は何か知っちょる?

“自分で育てた野菜を食べてみたい“ちゅうらしいよ!そんなん私ら毎日やっちょるよなぁ!!(笑)そんだけ、贅沢な暮らしを出来るんですよ田舎暮らしは!!

他人任せの生活から脱却し、自然の声を聴きながら生きる木村さんの生活はまさに『究極の贅沢』

人間が、自然の一部としての“自分“を認知できた時、そこに初めて至福の幸せが訪れるのかもしれないなと、筆者自身も木村さんと同じ田布施に生まれたことに感謝と喜びを感じました。

皆さんも、もし良かったらこんなステキなお百姓さんが住んでいる田布施で、一緒に豊かな暮らしをしてみませんか?

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※『人物百景@たぶせ』は、菊名池古民家放送局(https://www.kominka.tv)から暖簾分けを受けた、まちで生きる人々を取材して、まちをより深く知るためのコーナーです。

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