ニュースでもよく報じられる空き家問題。何が問題なのかを短期的な面から中長期的な面まで、私なりにまとめてみたいと思います。
(文:田原淳嗣)
日本全国に空き家が増えている

こちらの総務省統計局のグラフからも分かる通り、日本全国で着実に空き家が増えていっています。
2019年の国勢調査により、全国の空き家は820万個、住宅の約13.5%に至るというデータが発表されました。また、このままいくと2030年には空き家が2000万戸を越え、日本の住宅の約1/3が空き家になると予想されています。
3軒に1軒が空き家という事は、両隣のうちどちらかが空き家になるという事。ちょっと、不安になるレベルですね。。
管理されずに放置される“特定空き家“

空き家問題の中でも特別問題視されているのが“特定空き家“といわれる物件。所有者によって放置され、ボロボロに朽ち果てた建物はいつ崩壊してもおかしくない特定空き家は、
崩壊時には近隣建物や住民に危険をもたらすだけでなく、空き家が増えると近隣の犯罪率が増加する事も指摘されています。野生動物や害虫の発生温床となり、同じく近隣に悪影響を与えます。また、所有者が負担をしない場合、自治体が解体にかかる諸費用を負担せねばならない場合などもあり、自治体の経営に負担を与える状態でした。
そのため平成26年に定められた『空家等対策の推進に関する特別措置法』により、特定空き家に指定されると固定資産税優遇が受けられなくなることで課税が6倍となる、過料や解体費用を請求されるなどの措置を受ける、など、
特定空き家の所有者に責任があることをある程度明文化する動きに至りました。
核家族世帯が、なぜか三軒の家の所有者になる未来

現時点ではピンと来ない人も、今後10年で2.5倍も増加すると言われる空き家については、そのうち当事者となる人も少ないでしょう。
これだけ多くの空き家が発生する見込みとなっている理由として挙げられるのは、住まいが継承されていかないシステム欠陥にあります。親が建てた家があり、その子が独立して親との同居や継承を選択せずに新たに家を取得した場合、親の住む家はいずれ空き家となります。
そのような流れとなれば、例えば結婚して夫婦と子どもで暮らす核家族は、夫と妻それぞれの親から空き家を相続するため、二軒の空き家と自分の家の計3軒の家を所有しなければならなくなります。しかも、自分が住んでいない遠くの田舎とかに…
手軽さと便利さによって失われる見えづらい“価値“

空き家問題を引き起こす原因は、明らかに“新築住宅を建てすぎているから“です。
日本では35年といわれる住宅の寿命も、本来ちゃんと維持管理をしていけば100年くらいに寿命を延ばすことは十分可能といわれています。
2021年には“ウッドショック“を皮切りに、半導体などの電子部品の不足による様々な物資の供給が滞る、価格高騰を起こすなどの問題が起きています。手軽に安く物が手に入る時代の終焉はすぐそこまで来ています。
物を大切に扱い、その魂を全うすることは、人間本来の美徳であったはず。空き家問題を契機に、我々の暮らし方の見直しも一緒にすべきではないかと考えます。
2021年は『空き家活用元年』。これまでの住み方を見直そう。

コロナ騒動を契機に、世の中の不自然な部分があぶり出され、これまでのようないびつな豊かさは長くは続かないことが分かりつつあります。
住宅についても、家族で住み継ぐ仕組みを踏襲し、地域で住み継ぐ仕組みの構築についてみんなで考え、地域の財産をゴミにしないように、地域全体で既存建物の維持管理に取り組むフェーズに移行できれば、今後の空き家問題でみんなが苦しむ必要もありません。
空き家問題の解決のためには、①既存建物の維持管理を行ない、建物の長寿命化を図る。②建物の継承の仕組みを構築する。③既存建物の資産価値を適切に算出し、資産価値向上を図る。の点が重要です。
みなさんで共に考え、空き家問題とは無縁の地域づくりのきっかけが出来れば嬉しいなと思います。
ここ『田布施の耳たぶ』でも、今後の地域の生活拠点の価値を減退させないための議論の場を設け、みなさまと共に地域の未来について考えていけたらと思います。是非ご意見などお寄せいただけましたら幸いでございます。
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