人物百景@たぶせ、第5話は番外編として、
田布施から少し離れて、周防大島町で“自然農“を実践される堀晴彦さんのお話を伺ってきました。
名前:堀 晴彦 (ほり はるひこ)
プロフィール:東京都八王子市のご出身。6年前に山口県周防大島町に移住し、自然農の自家農園を営みながら自給自足の生活を実践中。
”耕さない、肥料をまかない、草や虫を敵対視しない”を基本とする自然農の実践と共に、自然あふれる”瀬戸内のハワイ”周防大島にて自然との共生を実践中。
民泊や自然農の教室”自然農学びの場”などを運営。一緒に自然と共生する仲間を募集中。
(聞き手・撮影・記事=田原)
※写真は一部堀さんからご提供をいただいておりますので、無断での転用はお控えください。使用をご希望の方はご連絡をくださいませ。
こちらは後編です。前編はこちら↓↓↓
〈自然農実践家 – 堀晴彦さん(前編)〉【人物百景@たぶせ(番外編)】 | 田布施の耳たぶ (tab-mimi.com)
土地のことを知るということ

周防大島に移住して6年。まだ情報が少なかった時期から、本などを参考に手探りで土地と向き合ってきたという堀さん。
自然農の場合、耕さないので畝をリセットする必要がない。だから、作物を最後まで育ててタネも取れるし、大きくなった作物の足元に、新しい作物を植えることも可能だそう。
田原 :これだけ色んな作物が立派に育ってますが、これまで逆にうまくいかなかった作物とかはあるんですか?
堀さん :実は夏のナスがなかなかうまくいかなくて。秋ナスはよく実るんだけどね。
住んでるとだんだん分かってきたんだけど、ここは夏に海から風が丘を登るから、その影響で土壌の温度が上がりにくいんですよ。

堀さん :でも、“ナスが育たない“ってもの個性じゃないですか。自分の農園はそういうものだって知って向き合うと更に面白いですよ。


自然農でもお互いに情報交換などするものの、様々なエリアや土地柄によっても野菜が育つ環境は全く違う。
そうしたものには、自らが興味を持って向き合うのが一番だということでした。
自然の循環と共に生きる楽しみ

田原 :自給自足の暮らしは大変じゃないですか?農地だけでもなかなか広大ですし…
堀さん :うちの農園は自家農園なので、家族で食べる分だけを育ててるんですよ。6年やってるけど、未だに“ちょうどいい“っていう量を育てるのはなかなか難しい。だいたい少なかったり多かったりしちゃうんだよなぁ。
でも、それを受け入れて、よく採れたものを食べたりするのも楽しいじゃないですか。毎日自分たちの食べるものだけに向き合って生きてるんだから、時間も自由に使えるし、これほど楽しい生活はないですよ。

堀さん :あと、自然農は耕さないから、農地をリセットしなくて済むんですよ。だから一つの野菜の生を最後まで見届けられる。これも楽しみでね。
このソラマメはこんなに大きくなるんだけど、タネを取れるまで実が熟れるにはもう少しかかる。
足元をみたらなんか植えられそうだなと。だから小松菜植えてみたんだけど、これがなかなか調子よく育ってんですよね!

野菜もちゃんとタネを採るところまでやって、それを続けていくと、この土地柄に合った固定種になっていって、個性が出てくるそう。
これだけ堀さんが自分の畑のことを熟知しているのも、土地、作物、気候、季節などと毎日毎日対話しているからなんでしょうね。
便利さが産む時間の無駄遣い
堀さん :ここは開墾して田んぼにしようと思ってるんですよ。

田原 :こっ、こんなに大木がそびえているのにどうするんですか?!
堀さん :これも切って処理するだけでひと冬くらいかかるかなぁ…
田原 :そりゃあかかりますよ…だってこんだけの大木だし、何本もあるじゃないですか。チェーンソーでやるにしても…
堀さん :ああ、チェーンソーは使いませんよ。僕はノコギリマニアなので!すごい時間かかるけどね。
田原 : ・・・
手ノコで木を切るメリットとしては、木がどっちに倒れるかとかがはっきり分かり、ゆっくり倒れるので安全だということと、…あとはやはり堀さん自身がノコギリで木を曳くのが大好きだという理由に尽きるようですね…笑笑
田原 :凄いとしか言いようがないです…。
ただ、手ノコでひと冬かかるんなら、チェーンソーでやったら早く済みませんか?
堀さん :そこが実は盲点だと思ってて、僕は草刈りにしてもほとんどカマしか使わないから、無駄なところまで草刈りしないんですよ。出来ないって言ったほうがいいかな?
もしも草刈り機使ってたら、この田んぼ候補地だってこんなに草生やしたまま放置しない。時間が限られているからこと、極限まで必要性を考えて行動するし、色々試してみるんです。
ノコギリでこの木を切るのは一筋半日くらいかかるけど、やっぱりそれでしか気付けないことってのも沢山あるし、極限まで時間を大切にしようとするもんだよ。機械を使っちゃうと、どうしてもその辺りが鈍ってしまう。
だから、この土地のことはよく理解してるつもりだし、ここに来る虫とか動物とか、どんな草が生えるかとか、だいたい分かるから上手にお付き合いできるんですよ。

堀さん :この梅の木の下なんて、夏には梅の葉が茂ってるからあんまり生えてこない。でも、葉が落ちた時期にそのまま草を生やしてるのはもったいないから、葉が落ちる時期の野菜のタネを撒いてみたんですよ。
面白いことにこれが元気で!ルッコラも美味しいでしょ?笑笑
でもさあ、これはこれでやっぱ野菜を踏みたくないから、ホントは梅の剪定しないといけないけど、踏みたくないから剪定には二の足を踏んじゃうというか…笑笑
心から自然と共生している堀さんらしさ満点なお話でした。
先人への感謝

堀さん :ここの沢から農地に水を引きよるんじゃけど、台風とか来ると良く詰まるんです。その都度ここに来ては堆積物を取ったりとか、ホント楽しいんすよ!
でもご近所さんとかみんな『あんたようやるねぇ』とか、『ここまで整備して凄いねぇ』とか言ってくれるけど、僕からしたらこんな立派な棚田があって、水路もあって、先人たちが人生をかけて山を切り拓いて農地にしてくれた。その土地があるから僕ら家族も生活できるんすよ。
僕はそうして作られた努力の結晶の跡地を使って遊んで暮らしてるだけ。この土地の祖先に『ありがとうございます』という気持ちしかないんですよ。
堀さんのお話を伺いながら、自分にはまだまだそうした気持ちが薄いことに気付かされる。

それはきっと、自分の理想の生活に注ぐパワーだったり、愛情だったり、そうしたエネルギーの総量の差なんでしょう。
真面目に遊ぶ。

ここは天国か。
田原 :これだけ広いフィールドで生活基盤を整えられる生活スタイル、常人に真似できる気がしません…なんでこんなパワーがあるんですか?
堀さん :いやいや、ホント、自分らの食べるものと向き合うだけだから、これくらいは誰でも出来るんですよ。まだまだ余裕があるんよ。笑笑
ホント毎日やりたいことだけ出来て、幸せな生活ですよ。さっきも言ったけど、昔みたいに真面目に遊んでる大人がいないでしょ?僕は毎日真面目に遊びよるよ!
ここで、これまでの人生で堀さんが遊びにこだわってきた様子を話してくださいました。
若い時には山登りなどのアウトドア、仕事で10年間赴任したタイでは、一泊二日の釣り漁船でのレジャー航海など、遊びには徹底的にこだわってきたご様子。
ただ、やはり遊び方からも自然が大好きなんだなぁということがしっかり伝わってくる。

堀さん :日本に帰ることになって、もう、これから先は自分の理想を叶えようと。
自分にとっては遊びなんじゃけど、みんなからは『あんたよう働くねぇ〜』って褒めて貰えるんすよね。でも、自分にとってこんな最高な遊び場はない。
だって自分らの食べるもののことだけ考えて、自分の好きなように出来るんよ!やりたいことだけして遊んで暮らせるんじゃけえ!!笑笑


田原 :これからチャレンジしてみたいこととかはありますか?
堀さん :まだまだいっぱいありますよ!さっきの田んぼの開墾もそうじゃし、『衣・食・住』っていうけど、たぶん後ろに行くほど簡単で、もう食と住はある程度自給できるようになってきたかなぁと思うけど、やっぱり問題は衣よね!奥さんは綿花をそだてようとしよるけど、ここもなんかいい方法ないかなぁと試行錯誤中ですねぇ!

今回“自然農“という農法をきっかけに堀さんからこうしてお話を伺う機会を得たわけですが、実際にお話ししてみて、自然の中に生きる人の話からは、自然そのままがまさに我々にとっての自然な生活に繋がるのではないかと思いました。
自然は裏切らないし嘘をつかない。
自然はその摂理のままに、ただあるがままに、次なる生に力を与えてくれる。
そして、そこに殉ずる生き方を選ぶ人にも、同じように摂理にそった恵みを与えてくれる。
そんな生き方をする堀さんの様子やお話から、自分の生き方を省みる貴重な機会をいただいたような気がします。
あるがままに生きる。ただそれだけ。

そんなステキな生き方と、その源になる自然の姿を拝見できた、かけがえのない一日でありました。
堀さんこの度は誠にありがとうございました!また遊びに来させてくださいね!
自然農について学びたい方はこちらのリンクご参照ください。
https://akameshizennoujuku.jimdofree.com/自然農関連リンク/自然農学びの場の案内/
※『人物百景@たぶせ』は、菊名池古民家放送局(https://www.kominka.tv)から暖簾分けを受けた、まちで生きる人々を取材して、まちをより深く知るためのコーナーです。
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